現代スサノウの言霊 

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外国の歴史(二)

 先に述べた如く鵜草葺不合王朝後半より外国の賢者・学者の来朝が盛んになった。竹内文献によれば次の如くである。
伏羲  鵜草葺不合王朝五十八代 御中主幸玉天皇の御宇
モーゼ 鵜草葺不合王朝六十九代 神足別豊鋤天皇の御宇
釈迦  鵜草葺不合王朝 七十代 神心傳物部建天皇の御宇
老子  神倭朝      一代 神武天皇の御宇
孔子  神倭朝      三代 安寧天皇の御宇
 日本の皇室は来朝した人々を受け入れ、その人その民族に適した表現を以て言霊布斗麻邇の原理の教育を行い、習得した後はそれぞれの故国に帰り哲学・宗教の形式で各民衆を指導し、来るべき数千年の暗黒時代における精神的支柱の役割を果たすよう使命を授けたのであった。更に各宗教・哲学の祖としての彼らの死後二百年及至五百年を経てそれらの聖書・経文等が編纂されているが、その編纂の計画には必ず日本から派遣された霊知りの指導があった事が伝えられている。これらの仕事は言霊原理をそのまま説くことなく、その代り呪示・表徴・概念・数字・哲学を以てする月読命の働きであるが、唯モーゼに授けた使命はその他の人々とは違ったものがあった。それは外国に於ける須佐男命の働きの中核として働く使命と伝達であった。
 モーゼの来朝は鵜草葺不合王朝六十九代神足別豊鋤天皇の時代のことである。神足別という天皇の贈名は神のタル(足・十、トーラ、十戒)を頒ち与えたという意味であり、豊鋤とは十四(豊)の先天言霊を持つ布斗麻邇の原理をヘブライ語のトーラとして授け、その律法の運用によってその民族を統率し、国家を樹立して、その民族が中核となってヨーロッパ民族及至世界の人々を動かし、爾来三千年にわたって須佐男命の使命である物質科学文明の開発、並びにそれによって得た経済・武器による権力によって世界の再統一を図る使命・職務を授与・命令したのであった。日本民族が天孫民族といわれるに対して、イスラエル民族が神選民族と呼ばれるのは所以はこの命令授与によるのである。モーゼは教えられた布斗麻邇の原理に則り旧約聖書の五書(ペンタ・トーチ)を作り、精神構造の根本義を示すと共に民族の行くべき将来と使命を決定したのであった。
 モーゼの日本来朝は彼がシナイ山に四十日四十夜籠ったと聖書に記されている時のことと考えられる。彼が授けられたイスラエルの三種の神宝(アロンの杖、黄金のマナ壺、十戒石)は日本民族の三種の神器(剣・勾玉・鏡)と同意味のものである。この三種の神宝は契約の箱に収められエルサレムの神殿に祭られていたが、ソロモンの時には己になかったと聖書に記されている。それ以前に日本に返還されたのである。
 モーゼの十戒に表十戒と裏十戒があると竹内文献は伝えている。表十戒とは旧約聖書にある「殺す勿れ、姦淫する勿れ…」の十箇条の道徳律であるが、裏十戒とは言霊布斗麻邇の原理の内の言霊ウを中心とした精神構造である八父韻の並べ方即ちアカサタナハマヤラワの十音である。
 このアカサタナハマヤラワの十音の真義と操作法がモーゼに与えられた事によって爾来三千年の世界の歴史の大綱が大きく決定づけられることとなる。このことを説明しよう。初めアカサタナハマヤラワの十音配列は伊耶那岐大神の禊祓の行法の中で三貴子の内の須佐男命の自覚内容として確立され、天津金木音図として高天原の五十音言霊構造の一つの内容として得られたものであった。その主体である言霊ウが他の四つの母音と協調して行く時高天原世界の円満な運営となる。所が人類の物質文明の速やかな発達を実現する為に、須佐男命は高天原の言霊法則の制約を受けない外国に進発して行った。これを言霊的表現を用いればウオアエイ五母音の協調体制である高天原の理想社会から言霊ウのみが離脱し独走を開始したことである。世界における須佐男命の使命である言霊ウの独走の現象の実行者としてモーゼが就くこととなったのである。世界の生存競争時代の開始であり、アカサタナハマヤラワの操作法はこの生存競争に絶対不敗の戦術なのである。このことを更に詳しく述べよう。著者の師故小笠原孝次氏の「第三文明への通路」を引用する。
〝全世界は須佐男命が本格的に活動する舞台となる。神足別豊鋤天皇とモーゼとの契約、すなわち所謂神の「旧約」によって須佐男命の事業を世界に実現する選ばれた責任者がユダヤ民族である。故に神選民族というのである。須佐之男命のヘブライ名をエホバ(ヤーエ)という。初めエホバは人間の楽園エデンを創設した愛と英知なる神であった。高天原にあっては天照大御神も須佐之男命も共に完成された生命の布斗麻邇の内容であって、別々に分離されたものではないのである。然るに或る頃からこのエホバの神格に変化が起こった。愛と英知なる神ではなくなって、聖書に示される如く戦の神、嫉妬の神であるオリンポス山のゼウス(ツオイス、チュピター)の世になったことと同一の消息である。…
 エホバはシナルの地に築かれた都市国家を破壊し、言語を乱して相通ずることなからしめ、民を地に逸散させてバベルの混乱を生じしめた。その部下のガブリエル、ラファエル、ミカエル、ウリエルと共に五大天使の一人であるルシファーを悪魔(サタン)として地に降して、人間を背後からそそのかして罪を行わしめた。
 高天原の組織から一人抜け出した荒振る神であり、「畔放ち溝埋め、しきまき、串刺し」(大祓祝詞)等の天津罪を犯した神、すなわちキリスト教でいう原罪の神である須佐之男命の暴挙を実際に行う者が神エホバ(ヤーエ)である。それは「出雲八重垣」の神であり、八重(やえ)言代主神である。何故にエホバの神格が斯の如く変貌したのか、聖書を神の経綸の書としてひもとく者は必ずこの疑問に直面しなければならぬが、本来善なるべき神が何故に魔神の所業を事とするようになったか。
 高天原の経綸である皇運は伸展して、鵜草葺不合王朝末期より世界人類の歴史は第二文明の科学建設時代に入った。科学は元来事物を破壊分析する方法によって究めて行く学問であると共に、これを促進させるためには特別の方便とはすなわち生存競争、弱肉強食の社会を基盤として発達する。
 然し生存競争は完成された高天原、すなわちエデンの園に於ける人類社会の有り方、営み方ではなく、人間生命の本来の意志に反する悪であって、人類の背後にあってその生存競争を教唆する者は神ではなくして魔神である。須佐之男命が高天原から神逐ひに追われた事の一つの理由は、彼が高天原から一人抜け出して、母神の伊耶那美の国である黄泉(四方津)醜女(しこめ)の国に赴いて魔神となったことにある。その須佐之男命の応作がエホバである。キリスト教だけの世界の事として言うならば、そのエホバが歴史の或る時期からこの魔神に変化したわけである。エホバがその天使ルシファーを悪魔に仕立てて地に降ろしたと言う事は、エホバ地震が魔神として人間界に君臨したと言う事と選ぶ所がない。
 斯くして全世界は漸次高天原日本の教庁からの愛と英知による指導から離れて、荒振る神、罪を科せられた神、天津罪を犯した神すなわちエホバ、ゼウスが支配する地獄・飢餓・修羅の巷に変貌して行った。世界を指導する者の神格の変化は直ちに現実の歴史の変化である。竹内文献によれば遠い太古から例とされていた天皇の世界巡幸も、世界五色人王達の来朝も鵜草葺不合王朝末期にはその跡を絶った。
 千(ち…道)早振る神代は精神文明の時代であった。人間の精神原理である布斗麻邇の展開としての道義のみが世界の権威であった時代である。この人間社会、娑婆世界は却初から浅ましい生存競争のるつぼであったわけではない。それは歴史的には僅々三千年或は四千年このかた、世界の指導者である天皇の宏謨によって方便として特殊に仕組まれて、人為的に現出した社会相である。
 この生存競争の社会に生存するためにはその競争相手に勝たねばならぬ。この時何が闘争に取り早く勝利をもたらすかと言うと、信仰や道徳などではなくて、簡潔に言えばあらゆる意味に於ける科学の優秀性である。…近代産業に於いても科学と経営上に優秀な技術を持った企業のみが経済社会に生き残る。…
 高天原の道義政治時代が世界に於いて一応終了した時、新しい世界経綸の方針と計画に参与する思想の構造としての人間の基本理念に名付けられた称名が須佐之男でありエホバである。その理念の実行者がモーゼであり、イスラエル民族であり、そのための教えが旧約聖書の半面であり、シオンプロトコールである。それは元来善なる神が三千年間の暫時の方便として悪魔の仮面を被った姿である。神劇の仮装舞踊会に悪魔に扮装して登場した者がユダヤ民族なのである。…
 ユダヤ民族が高天原の天孫民族と並んで、光栄ある神選民族である所以は此処まで掘り下げて究めなければその真意義を明らかになし得ない。そのモーゼのイスラエル建国の企図の奥には期くの如き遠大深刻な目的が蔵されてあった。そのモーゼに三種の神器の使用を許可し、これと相図って三千年の計画を実行せしめたのが葺不合朝の神足別豊鋤天皇であられたのである。(「第三文明への通路」)
 長く師の文章を引用したが、それはモーゼのイスラエル国家の建設とそれ以降のヨーロッパ諸民族の経営更に爾来三千年の世界の弱肉強食の権力による歴史の原因をよく説明して余す所がないことによる。竹内文献によればモーゼは日本の皇族である大室姫命(ローマ姫)を妻とし、その子ロミュラスが生れ、彼は〝狼の育てられた〟と伝説されるローマ帝国の創始者であると記されている。更に文献はモーゼの再度の日本来朝と能登宝達山に薨じた事を伝えている。聖書の「今日までその墓を知る人なし」(申命記)の記事はそのことを裏書している。
 かくして世界は須佐男命・大国主命・エホバが主宰経営する弱肉強食の生存競争の時代に入った。この時以降は各民族・各国家の歴史が伝える如く国家・民族間の葛藤連続の時代が続く。世界の歴史書はこの時以後の記録には詳しい。そしてその時以前の世界の道義政治時代の記録は地球の表面から抹殺又は時の来るまで隠没されたのである。〝焚書〟とは秦の始皇帝のみの業ではなく世界各地で行われたことである。
 歴史書に詳しいそれぞれの国の権力闘争の経緯についてはさて置き、それら各民族の栄枯隆盛の底流をなし原動力であったユダヤ民族のその後の動行に注目しよう。モーゼのその民を率いてのエジプト脱出、それに次ぐイスラエル建国後その国家の繁栄が続いた。ダビデ・ソロモンの時繁栄はその頂点に達する。ダビデ時代にその民族の三種の神宝は日本に返還された。この事件は次に続くユダヤ民族の行動と密接な関連がある。その国家はイスラエルとユダヤ両国に分裂し、遂に両国は滅亡する。そしてその民族は世界の全地に逸散することとなった。先にエホバはバベルの混乱によって人々の言葉を乱し全地の表に散らした。そして今や彼自身の民族を奪って世界に散らす。それは彼等を散らし他の諸民族の中に入らせ、人類の背後に立たせることによりエホバの究極の目的を速やかに達成させる為である。
 ユダヤ即ちヘブライ民族は彼等の指導者である預言者の黙示に従って東と西に民族移動を開始する。旧約イザヤ更にダニエル書に「この故になんぢら東にてエホバをあがめ海のしまじまにてイスラエルの神エホバの名をあがむべし。われら地の極より歌をきけり。いわく栄光は正しきものに帰すと。」(イザヤ書24章15節)「彼は海の間において美しき聖山に天幕の宮殿をしつらはん。…その時汝の民の人々のために立つところの大いなる君ミカエル起き上がらん。…」(ダニエル書11章45節)と見られる如く、その予言に従ったユダヤの十二支族のうちの宗教的部族レビの一団は東に向い、所謂シルクロードを経て極東に姿を現わし、中国やその東北部に入り、それぞれの民衆の内部に入り込んで勢力を張った。中国東北部の殷を滅ぼした周以降秦・漢等は西方から入って来た異民族の国家である。
 更にそのユダヤ人達は海を渡り最後の民族移動をして日本に渡来して漸次帰化した。そして次第に日本の政治の中心に深く関係を持つようになった。今までの歴史書はかくの如く中国大陸又は朝鮮よりの渡来帰化人を朝鮮人又は中国人と記しているが、実は彼等は古来からの東洋の住民ではなく、西方から渡って来た異民族系の人々である。
 かくの如く「海の間において美しき聖山に天幕の宮殿をしつらはん…」と予言された渡来のユダヤ人の目的は何であるのか。民族移動の最終目的地を日本と定め艱難辛苦して渡来して来る彼等の目的は何であるのか。
 この目的を明らかにする為にはユダヤ十二部族のレビ族以外の十一部族の行動と併せ注目しなければならない。レビ族の東進に対して他の部族は滅亡の祖国を離れて西進を開始する。国土を失った彼等はヨーロッパの各国・各地の民衆の中に入り、その経済的地位を確立し、然も彼等ユダヤ人としての団結を損なう事なく、その上政治のにて社会・国家の生存競争を指導して行った。優秀な地力と豊かな財力は彼等の武器となった。爾来薬三千年間生存競争の中から必然的に育った物質科学文明とそれを手段とする武力と権力を以て世界を統一し、西進の末に彼等の神エホバ即ち大国主命即ち須佐男命の魂の故郷である日本…そこに先に東進した仲間レビ族の子孫が持っている日本に彼等の大きな成果を引揚げて来る事、それが神に選ばれたユダヤ民族の使命なのであり、日本を目指して東進・西進して来る彼等の目的である。ユダヤ民族にこの使命を与えたのは直接には神足別豊鋤天皇であり、その命令の主眼は古事記にある伊耶那岐大神の須佐男命に示した「汝が命は海原を知らせ」の命令である。海原とは先に説明した如くウの名の原(領域)のことであり、現識に基いた物質文明の分野である。
 以上の如き人類の三千年の歴史を呪示した神話を二つ挙げておこう。一つは毎年行われる七月七日の七夕の行事である。陰暦七月七日の夜、天の川の東西にある牽牛と織姫の二星が年に一度会うのを祭る。これは高天原から神逐いに外国に出奔した須佐男命が三千年にわたる辛苦の末、その成果である物質文明全部を携えて再び姉神である天照大御神の存す高天原に帰還報告することを予言呪示した行事である。織女とは空間五母音と時間八(十)父韻とを経縦に文明の歴史という布を織り創造して行く経綸者としての天照大御神を示し、牽牛とは現識である言霊ウが静まった一般大衆衆生を牽いて物質世界をリードする須佐男命を表わしている。七月七日とは七七四十九で、易経に「大衍の数五十、その用四十有九」と示されているアイウエオ言霊五十音の原理運用の法則を呪示する。
 その二は出雲風土記に見られる次の文である。「今者国引訖詔而。意宇杜邇御杖衝立而。意恵登詔。故云意宇」国を引くのは古事記大国主命の系譜に見える八束水臣津野命。国引きとは須佐男命・大国主命の応作エホバ神の事業の実行者であるユダヤ民族が物質文明を手段とした武力・権力を以て世界を統一する任務を呪示する。その国引きの手段は言霊オとウ即ち経験知と現識・欲望の森(分野)の判断原理(御杖)によっている。そして国引きである世界統一を終えた時、意恵と言った。それは終えと言霊オエとを掛けている。権力による世界統一を終えた後は、欲望世界の経験知である言霊オは高天原の主宰天照大御神の持つ言霊エと合体して、神逐い以前の言霊原理による道義の政治の世界を再び顕現しなければならぬのである。すなわち西進したユダヤ民族は科学文明の成果を携えて先に東進した自分の仲間が待っている高天原日本に到達する。モーゼ以降三千年の世界の歴史の大綱はこれに盡きるといって決して過言ではない。
 読者は以上の神話引用の説明を読んで、歴史書が歴史の実際の現象を書かず余りに抽象的叙述に過ぎると思われるかも知れない。然しながら読者が一度言霊学の大要を理解し、人間生命の全性能であるアオウエイ五母音の働きとその次元的相違を明確にした上で、その眼を以て過去三千年にわたる人類の歴史、その中に於ける特筆すべき歴史事件、又それらの底を一貫している大きな歴史の筋道を洞察されるのらば、今・此処に生きている自分自身の中に息づいている全人類の魂としての歴史を成程と了解されるであろう。