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外国の歴史(三)

イスラエル・ユダヤ両国家滅亡後東に進んで彼等の師モーゼの魂の故郷日本に向った信仰的なレビの一族とは反対に、他の部族は西に向って民族移動を開始した。東漸のユダヤがアベルの末なら西に向ったユダヤ人はカインの末だということが出来る。西漸した部族は先ずヨーロッパに入り、諸部族の背後に立って生存競争を助長し、その社会の中で漸次第二文明である科学の研究を推進して行った。先に高天原日本から出発して行った須佐男命・月読命の活動の下に、産声を上げた東洋古代の科学である東洋医学・本草学・煉丹還金術等は初め東漸のユダヤに受け継がれ次第に発達し、更にシルクロードを通ってアラビア人に伝わりアルケミーとなった。近代科学の嚆矢であった。中世より近世にかけて物理学・化学・天文学・植物学の物質科学並びに諸人文科学は次第に進歩の速度を早めて行ったのである。
 かくしてここ二・三千年の人類の歴史は、戦乱の連続であり、戦争の合間に人々は束の間の平和を憩うというのが実情となった。古代中国に於ける尭・舜の治政下の鼓膜撃壌なる形容語は完全なユートピア的物語となった。各民族の神話が伝える王道楽土の時代がこの地球上に永続していたという事実を人々は忘却してしまったのである。
 人間とは何か、の究極構造の自覚であるアイウエオ五十音言霊の立場から見る時、世界を貫く第一義の歴史は神であり仏陀である覚者・聖としての天皇が計画し転輪する文明創造の歴史であり、哲学的に言えば言葉の言葉であるロゴス発展の歴史である。それが或る時を境として経綸創造の第一義としての歴史の表面に虚しい泡沫の如き第二義的な苦悩にみちた葛藤の歴史の相が現れ、人々は遂にその葛藤の因果宿業の関係のみが歴史であると錯覚してしまったのである。
 栄枯盛衰のこの時代各国の王達は富国と同時に強兵に狂奔した。強い軍隊を持つ事は国家の存立に欠く事の出来ない条件であった。強兵のために優秀な武器が必要である。成可く大規模な生産設備が必要となる。大国となるには産業の興隆と軍備の拡張は必須の条件となる。かくて数千年にわたる須佐男命の意図である生存競争場裡に第二の物質文明を創造する活動は着実に成果を挙げ、ヨーロッパに於けるルネッサンス並びに産業革命を経て、物質科学の華が咲く時代を迎えるのである。特に第一次・第二次の世界大戦を契期として物質科学の研究はその極点に達した。世界文化の物質科学的変貌は目をみはるものがある。戦争が物質科学研究を促進さす為の必要悪だという主張がこの時程真実性を持つ時代は他にあったであろうか。